カタブツ竜王の過保護な求婚

 泣いてはダメだ。泣く前にやれることを全力でやるのだ。
 しかし、涙を我慢することはできても、嫉妬する心を抑えることはできなかった。

 アルクネト大公との久しぶりの再会はどうだったのだろう? 本当にカインの初恋の人だったらどうしよう?

 次から次へと湧き上がる疑問、不安。
 嫉妬という感情は知っていたけれど、これほどに醜く気持ちの悪いものだとは思ってもいなかった。

 それでも妻は自分なのだから、離縁でもしない限り正式にカインとアルクネト大公が結ばれることはないのだ。どんなに二人が想い合っていても。
 カーラだって同じ――。


(って、嫌なやつ! 嫌なやつ! すっごい嫌なやつ! わたしって最低!)


 醜悪な考えにぞっとして、レイナは上掛を頭まですっぽりかぶって自分を罵った。
 そんな夜が続けば、どうしても表面に出るし、皆にも知られてしまう。
 ノーラに手伝ってもらって、両目に布を当てるレイナを、じっと見ていたアンヌが口を開きかけた。
 と、そこへノックの音が響く。

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