カタブツ竜王の過保護な求婚

 アンヌはふうっと息を吐くと、応対のためにドアへと向かった。
 そして、短いやり取りの後、らしくない足取りでレイナの許へ戻ると、明るい声で告げた。


「レイナ様、王太子殿下よりお手紙が届いております」

「本当に!?」


 勢いよく立ち上がったせいで、目に当てていた布がぺたりと床に落ちたのもかまわず、レイナは盆に載った封書を凝視した。
 信じられない思いで、手紙へと手を伸ばす。

 表には何も書かれていなかったが、裏返せば、簡潔に『カイン』と名が記されていた。それは間違いなくカインの筆跡。
 近衛騎士とは入れ違いになったのか、託した手紙の返事ではないようだったが、そんなことはどうでもよかった。

 嬉しさのあまり、手紙を胸に抱くと、居間中をばたばたと走り始める。
 叫び出したい気分だったが、それはまずいだろうと我慢したのに、走り回るのもまずかったらしい。ついにアンヌにたしなめられた。


「レイナ様、お喜びは十分に伝わりましたから、そろそろ落ち着いてくださいませ。手紙は読むものであって、抱いて走り回るものではございません」

「だって、カイン様からの手紙なのよ!?」

「それでも」

「夢かも知れないわ!」

「現実です」

「絶対に⁉」

「間違いなく」


 レイナだけでなく、アンヌもようやくいつもの調子に戻ったことで、どこか沈んでいた部屋の雰囲気が一変して明るくなった。


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