カタブツ竜王の過保護な求婚

 挨拶も状況説明も何もない、カインの真っ直ぐな言葉。少々乱雑な文字から、忙しない状況が伝わってくる。
 それでもレイナのことを考えてくれているのだ。

 帰って来ると、待っていて欲しいと、レイナが今一番に必要としていた言葉をくれた。
 胸がいっぱいで上手く息ができない。深呼吸を何度繰り返しても苦しいまま。
 嬉しさのあまり叫び出してしまいそうになる。
 いっそのこと、そうしてしまえば楽になれるかもしれない。

 レイナは壊れ物のように、手紙をそっとサイドチェストに置くと、すうっと息を吸って、がばっとベッドにうつ伏せに飛び込んだ。
 それから枕を抱え顔を埋めて、じたばたと悶える
 いつの間にか、むふふと声に出して笑っていた。
 一方、隣の居間では、アンヌとノーラが寝室へのドアに耳をくっつけて様子をうかがっていた。


「また残念な笑いを……」


 がっくりするアンヌに、ノーラも「まったくですねえ」と賛同する。その二人の姿も十分に残念なのだが。
 どうやら悪い知らせではなく、嬉しい知らせだったようだと安堵して、二人は笑顔で頷き合い、ドアから離れたのだった。 



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