カタブツ竜王の過保護な求婚
「……あなた方は、なぜあの戦であれほど簡単にフロメシアが敗れたのか、ちっとも理解していないのね」
学び始めたばかりのレイナでもわかることなのに。
フロメシア王国は歴史ある豊かな国だった。
しかし、それらの豊かさは王侯貴族たちが独占し、民は日々を細々と暮らしていた。
そこへ数年前の酷い干ばつで、農作物が大凶作となってしまったのだ。
人々が飢えに苦しみ、木の根まで食べるようになっていたにもかかわらず、貴族たちは享楽的な生活を続けていた。
当然の結果として各地で起こった決死の反乱を、為政者たち――父であるラクスはかろうじて鎮圧したものの、また起こることを恐れ、対外に目を向けさせようと戦を起こしたのだ。
――この度の干ばつは獣人たちが雨神(あまがみ)を独占しているせいなのだ。あの緑豊かな地を見ればそれがわかるだろう。あれは本来ならば、我々が得るはずのもの。よって奪い返すべきだ。
と、あまりにも馬鹿げた発令で民を徴兵して。
酷い圧政からようやく解放された人々が、またラクス王を望むだろうか?
そう思うと少し冷静になり、代わりに夫人たちに対して憐れみのような感情が生まれた。
夫人はレイナの言葉が気に入らなかったのか、恐ろしいほどの形相で睨みつけていたが、暗闇の中ではそれほどの効果もなかった。
「着いたわ」
レイナは目の前に突如現れた土壁を手のひらで示してから、さっさと扉へ向かった。