カタブツ竜王の過保護な求婚

「やはり賠償金額が大きすぎるのだ。ご存じのとおり、我々は先の災害で大損害を被り、民の生活も苦しくままならない。そのうえ、あのような賠償を求められてはさらに民を苦しめることになる」

「なるほど……」


 数か月に及ぶ期間、事前協議があったにもかかわらず、今になってラクスが不満らしきことを口にしても、フィルに動揺は見られなかった。
 ただ内心でラクスの傲慢さに嫌悪はしていた。

 そもそもこの交渉は先の戦での敗戦国であるフロメシアに対するユストリス側の恩情である。
 一昨年の世界的大干ばつから続く災害に、フロメシアは飢饉に陥った。
 そのため大陸の北方に国土を持ち比較的被害が少なく、食物も豊富な獣人の国――ユストリスにフロメシアは無謀にも攻め入ったのだ。

 結果、無残にも敗北。
 本来ならばそのまま属国にされてもおかしくはなかった。
 それを賠償と国王ラクスの退位――王太子レグルの即位とそれに伴う首脳陣の退陣という破格の条件をユストリス側は提示してきたのだ。

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