カタブツ竜王の過保護な求婚
「いや! いやよ! 絶対にあんな野蛮な国へなんて嫁がないわ!」
フロメシアの宝石と呼ばれる王女ルルベラは美しい顔に涙を流して嘆いた。
お付きの者たちは大切な姫様が泣かれていらっしゃることにおろおろとしていたが、兄であるレグルだけはうんざりとした面持ちでため息を吐いた。
レグルの妹姫は、レグルの母でもある王妃の美貌を受け継ぎ、その美しさから〝フロメシアの宝石〟と讃えられている。
金糸を紡いだような髪に澄んだ青空のような瞳の姫たちは、宮殿に出入りする吟遊詩人たちの心をとらえ、愛の詩を歌わせた。
だが両親に甘やかされて育ったルルベラは見かけとは違って、かなり我儘に育ってしまっていた。
レグルから見れば、はっきり言って性格は悪い。
この我儘姫にレグルは手を焼いているので、嫁に行ってくれるのなら万々歳である。
(いや、しかし……関係が悪化する可能性のほうが高い)
いまだクッションに突っ伏して悲劇の姫のようにすすり泣くルルベラを見下ろし、レグルはこめかみをさすった。