カタブツ竜王の過保護な求婚

「どちらに行かれるんですか?」
「この国の……恵みの園、かな」


 カインが少し考えて答えると、レイナは期待に輝かせた琥珀色の瞳を大きく見開いた。


「恵みの園⁉」


 それは、この世界に伝わる神話。――太陽神と大地神が初めて出会った場所。生命のはじまった園。
 わくわくしているレイナを見て、カインは微笑んだ。


「住む場所を追われた祖先たちが、安住の地を求めて長い旅を続け、そして得た土地だ」


 庭の先にある木立の間を歩みながら説明したカインは、頑丈そうではあるが、素朴な木材でできた扉の前で立ち止まった。
 簡単には越えられそうにない高い土壁が左右に広がっている。
 王城内にこんな場所があるとは知らなかったレイナは、興味深そうに扉を見上げた。


「ここは裏口になる。正面には門が据えられているが、普段は昼間でもしっかり鍵が掛けられているから」


 カインは隠れるように立っていた兵に合図して、扉を開けさせた。
そして、アンヌたちへと振り向く。


「悪いが、君たちはここで待機していてくれ」

「しかし――」


 言いかけたラベロの反論を、カインは手を上げて制した。そのまま腰に佩いた剣に手をやり、柄を軽く叩く。


「自分の妃を守るくらいは、私にもできる。それに、この中にも守護する者たちはいるから心配ない」


 静かな口調ながら、有無を言わせぬ強さがあり、ラベロたちは黙って従った。


「では、行ってきます!」

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