シークレットベイビー② 弥勒と菜摘
✴︎
高1で彼に会った。
彼に会って、少し、櫂や亜紀ちゃんの気持ちが分かった。
泣きたかったり、一緒にいるために頑張りたくなる気持ちも分かった。
その人だけに自分の気持ちが向かってしまうこと、どうしようもないこと。
廊下。
彼が、長い腕を組んですってそこに立っていた。
冷んやりした横顔。
少し伏せた感じのまつ毛が、ちょっと冷静な感じの整った眉とセットみたい。
知的で広い額と、綺麗な鼻筋。
そこにジーッてして、彼の存在に目が離せなくなった。
黒髪。櫂よりちょっと長い。
弥勒は生え際って感じだけど、この人は、多めの前髪の切れ目から、広くて知的なおでこがのぞいてる。背が高いから頭の上がどうなってるのか、座っている時に見てみようと思う。
制服が体にぴったり沿っていて、細いのに体格がいい。厚みがあって程よい。
弥勒みたいな筋肉って感じしない、なめらかなかんじ。
手足がすごく長くてまっすぐな背筋、悠然と動いて、ずっと姿勢が良くて清潔感を感じる。
目が切長。唇が薄い。輪郭が綺麗。
顔が綺麗。
すっきり。
全体にあっさり。
空気がきれい⋯⋯ 。
気がついたら、彼の目の前でじーっと彼を見ていた。
なんか心が震えた。
「あの、山の上の子だろ?
超、お金持ちの」
あ、声もいい。
しゃべり方もちょうど、いい。
落ち着いてて、物静かで、冷めてて。
自己主張しない。
「私はお金持ちじゃない。家がお金持ちなだけ」
わたしを見る目もいい。
真っ直ぐに見るのに何も心を感じさせない、こんな目。
知らない人に話しかける時、こんな風に揺らがずに、自分を持っていて、だから真っ直ぐ刺すようにこちらを見れる、そんな自分のある人。
「まぁ、そうだよね。
僕は普通かな。べつに貧乏ではないけど、石動さんからしたら、貧乏かも」
淡々と話す。でも興味がないんじゃなくて、ちゃんと好奇心がある。
石動さんだって。
初対面なのに、まぁ、ほとんどの人は学年に関係なくわたしを知ってるみたいだけど。
でも、変な浮ついた感じじゃなくて、単純に目の前のわたしに、彼の心がちゃんと興味を持って、一般的なお天気みたいな内容じゃなくて、わたしに話してる感じが、わりと嬉しかった。
「菜摘はもっと貧乏。
両親が中学の時死んで、親戚もいなかったから」
「それは大変だね。確かに。本当に大変だ」
彼はわたしを『あれ? 』という顔で見た。もうわたしを知らない子ではなくて、ちゃんと人として話してくれてた。わたしが人間として彼の頭の中に存在していた。だからもう、この人とは知り合いになってる。
「⋯⋯ 菜摘って誰? 」
「お母さん」
「⋯⋯ 」
なんか思った通り。
彼の周りの空気が違う。色が違う。
気持ちがじわじわって周りに染み出すみたいに、彼の周りは、彼の気持ちが取り巻いていて、ぼんやりするぐらいいいと思った。
なんとなく人を寄せ付けないような感じがする。
やたらと周囲に惑わされず、彼は彼のまま、彼自身の色。そこに存在している。
自己主張してないのに自分がある人。
彼の中に入ったら、入れてくれたら、きっと全部忘れちゃうに違いない。
彼は動じずうすく笑っている。
でも目は笑わずに、じーっとわたしを見ている。
彼の方からは動かない。
そこにいるつもりなんだと動かない。
わたしも動じない。
じーっと彼のそばから離れない。
何でとかどうしてとか、そんなんじゃない、ただ惹かれた。
誰かが彼の空気に入ってしまったら、彼にに選ばれる人がいたら、わたしは死んでしまうかもしれない。
高1で彼に会った。
彼に会って、少し、櫂や亜紀ちゃんの気持ちが分かった。
泣きたかったり、一緒にいるために頑張りたくなる気持ちも分かった。
その人だけに自分の気持ちが向かってしまうこと、どうしようもないこと。
廊下。
彼が、長い腕を組んですってそこに立っていた。
冷んやりした横顔。
少し伏せた感じのまつ毛が、ちょっと冷静な感じの整った眉とセットみたい。
知的で広い額と、綺麗な鼻筋。
そこにジーッてして、彼の存在に目が離せなくなった。
黒髪。櫂よりちょっと長い。
弥勒は生え際って感じだけど、この人は、多めの前髪の切れ目から、広くて知的なおでこがのぞいてる。背が高いから頭の上がどうなってるのか、座っている時に見てみようと思う。
制服が体にぴったり沿っていて、細いのに体格がいい。厚みがあって程よい。
弥勒みたいな筋肉って感じしない、なめらかなかんじ。
手足がすごく長くてまっすぐな背筋、悠然と動いて、ずっと姿勢が良くて清潔感を感じる。
目が切長。唇が薄い。輪郭が綺麗。
顔が綺麗。
すっきり。
全体にあっさり。
空気がきれい⋯⋯ 。
気がついたら、彼の目の前でじーっと彼を見ていた。
なんか心が震えた。
「あの、山の上の子だろ?
超、お金持ちの」
あ、声もいい。
しゃべり方もちょうど、いい。
落ち着いてて、物静かで、冷めてて。
自己主張しない。
「私はお金持ちじゃない。家がお金持ちなだけ」
わたしを見る目もいい。
真っ直ぐに見るのに何も心を感じさせない、こんな目。
知らない人に話しかける時、こんな風に揺らがずに、自分を持っていて、だから真っ直ぐ刺すようにこちらを見れる、そんな自分のある人。
「まぁ、そうだよね。
僕は普通かな。べつに貧乏ではないけど、石動さんからしたら、貧乏かも」
淡々と話す。でも興味がないんじゃなくて、ちゃんと好奇心がある。
石動さんだって。
初対面なのに、まぁ、ほとんどの人は学年に関係なくわたしを知ってるみたいだけど。
でも、変な浮ついた感じじゃなくて、単純に目の前のわたしに、彼の心がちゃんと興味を持って、一般的なお天気みたいな内容じゃなくて、わたしに話してる感じが、わりと嬉しかった。
「菜摘はもっと貧乏。
両親が中学の時死んで、親戚もいなかったから」
「それは大変だね。確かに。本当に大変だ」
彼はわたしを『あれ? 』という顔で見た。もうわたしを知らない子ではなくて、ちゃんと人として話してくれてた。わたしが人間として彼の頭の中に存在していた。だからもう、この人とは知り合いになってる。
「⋯⋯ 菜摘って誰? 」
「お母さん」
「⋯⋯ 」
なんか思った通り。
彼の周りの空気が違う。色が違う。
気持ちがじわじわって周りに染み出すみたいに、彼の周りは、彼の気持ちが取り巻いていて、ぼんやりするぐらいいいと思った。
なんとなく人を寄せ付けないような感じがする。
やたらと周囲に惑わされず、彼は彼のまま、彼自身の色。そこに存在している。
自己主張してないのに自分がある人。
彼の中に入ったら、入れてくれたら、きっと全部忘れちゃうに違いない。
彼は動じずうすく笑っている。
でも目は笑わずに、じーっとわたしを見ている。
彼の方からは動かない。
そこにいるつもりなんだと動かない。
わたしも動じない。
じーっと彼のそばから離れない。
何でとかどうしてとか、そんなんじゃない、ただ惹かれた。
誰かが彼の空気に入ってしまったら、彼にに選ばれる人がいたら、わたしは死んでしまうかもしれない。