アンチテーゼを振りかざせ




あの男が、
何気なく投げてくる言葉がいつも怖かった。


だって認めたりしたら。

曝け出せばその分、否定された時の痛みが大きい。



"…え!?紬って俺のこと好きなの?惜しいなあ。"


昔、かけられた言葉に
あの頃の私は、容易く傷ついた。

そして深く心に刻まれた。


女の子は、
ちゃんと努力しなきゃ受け止めてもらえない。

素の私じゃ、好きになってもらえない。

いつかまた好きな人ができたら、
今度は"惜しい"だなんて言われない自分で居たい。


ずっとそう、思ってきた。





_____でも、本当はね。

あのヘタレの2人みたいに、
真正面からの恋をしてみたかった。



"あんたが生ビールとサキイカで喜んでるとこ、あんまり他に知られたく無い。"

"……な、んで…?"

"勿体ないから。"



惜しい、じゃなくて

勿体ない、なんて。



あんな風に言ってくれる人には、

私はもう二度と、出会えない気がするの。




< 134 / 203 >

この作品をシェア

pagetop