アンチテーゼを振りかざせ



最寄駅に辿り着いて、改札を勢いよく駆け抜けた私は、電車内だけではいまいちまだ呼吸が整い切っていない。


自分の日頃の運動不足を痛感しながらも、駅を抜けて走り出す。


大きな車道沿いの歩道を全速力で通過していると、視界の端には毎日見慣れたガードレールが映っている。


あの男との、この場所での思い出が蘇ってしまうとまた涙は出てくるから、なんとか耐えて前を向いた時、脇にポツンと設置された自販機を目にして、一度足を止めた。


スマホをかざせば、あっという間に購入できて、ピ、と軽快な音で勢いよく飛び出すそれを手にする。


そして再び、足を前へ進ませようともがく。


足はとっくに凄く痛いし、
絶対にこれは、筋肉痛になる。


だけど、私はあの男に、言いたいことがある。




< 135 / 203 >

この作品をシェア

pagetop