―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
「それより私の瞬発力と力を褒めてほしい。テニスで鍛えたおかげか、力がついたみたい」

ふふふと透子が得意げに笑うと、「うんうん、透子ちゃんは気が優しくて力持ち」と、陳さんもにこにこ笑って相槌を打つ。

そこで着信音が鳴り響き、顔をしかめて龍道コーチがパンツのポケットからスマホを取り出した。
画面をチェックし、「あっ!」と叫ぶ。

「やばい、打ち合わせがあったんだ。時差ボケでうっかりしてた。俺、行くわ。陳さん、支払いはつけておいて。あと水之さん、今度の土曜はデートだからね」と言うと、龍道コーチは慌ただしく店を出ていった。

「僕はトイレに行ってくる」と田淵も席を立った。


「新ちゃんは抜けてるんだよなあ。透子ちゃん、やっぱりもっといい男を紹介してあげるよ」

鷹のように鋭かった目を優しく細め、陳さんが透子に笑いかけた。
ううん、と透子は首を振り、陳さんに笑みを返した。

「そう? ま、気が変わったらいつでもいってね」

誰かが帰っていけばまた新しい客が訪れる。
天龍に人が途絶えることはなく、店内は活気に満ちていた。
陳さんは奥から名前を呼ばれ、慌てて厨房へと戻っていった。
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