―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
鈍い君へ
土曜日は朝から太陽が強く照りつけ、暑い一日になりそうだった。
透子はゆったりとしたラインの青いリネンのワンピースにローヒールのサンダルで部屋を出た。
龍道コーチはいつも10時45分にやってくる
。特に気にしたことはなかったけど、11時ではなく、10時45分だ。
透子はマンションの前で待っていようと、いつもの時間10分前にマンションの前に出たのに、すでに道路の向かい側に停めた車に龍道コーチが寄りかかってスマホを見ていた。

白いTシャツにジーンズにスニーカー。
特にセットもしていないサラッとした髪でうつむく姿は大人びた大学生のようにも見える。
自分を待ってくれているんだなと思ったら、透子はふいに胸がキュンとして、瞳の奥までじんとした。

透子の気配に気づいた龍道コーチが顔を上げ、右目にかかった前髪を無造作に指ではらうとにっこり微笑んだ。
龍道コーチが透子に向かって歩いてくる。
透子も笑みを返したはずなのに、失敗したらしい。

「なんで泣きそうな顔してるわけ?」
「なんでもない」
「もしかして会えない時間がつらかったとか」

冗談ぽく言いながら龍道コーチが透子の顔を覗き込んだ。

「違うわよ、ちょっとまぶしかったのよ」
「そっか、俺は透子さんのことずっと恋しかったけど」

そういって透子を抱き寄せた。

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