―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
自分に向かって手を振っている透子を見つめながら新は考えていた。
これまで新の周りに集まってくる女性はみんな何かをねだった。
食事や物、新が持つコネや財力。
新のルックスと、それ以上に龍道家の御曹司という豊かな餌に食らいつき、むさぼろうとする。

龍道家の子供は代々某有名私立大学付属の小学校に入り、そのまま大学まで進む。
企業家の息子が多いので、将来社会に出たときにもパイプがつながり事業で役立つというメリットがある。
そうした金持ちと付き合うために、その大学に娘を送り込む親が多いことを、同級生の医者の息子から聞いて新は驚いた。

「そんなの有名な話だぜ。いいんだよ、食うだけ食っときゃ」

おしゃれでつるりとした顔立ちの彼は屈託なく言って笑ったが、確かにそんな女子は高校にも多くいて、新はうんざりした。

そこでより難関の他の大学に志望校を変更し、合格に向けて必死に勉強しのだ。

最後は神にすがろうと湯島天神に行ったわけだが、勉強のし過ぎがたたって貧血で倒れそうになるとは。
もし透子が助けてくれなかったら受験さえできなかったかもしれないと、新はそのとき透子が神様の使いじゃないかと思ったほどだ。

透子になら何をねだられてもよかったのに、いや何か贈りたい気持ち満々だったのに、まさか拒否られるとは。
がっかりしすぎて腹さえたった。
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