―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
「なにしてんだよ」

落ちてきた声に顔を上げると、いつの間にか隣に龍道コーチが立っていた。

「あ」
「あ、じゃねーよ。黙って帰るな。送っていくよ」

まだそれほど酔っていないと思っていたのに、立ち上がると頭がぐらぐらした。
龍道コーチに対する文句はひとまず胸におさめ、透子は素直に頷いた。

酔いと久しぶりに履いた高いヒールのせいで足取りがおぼつかない。
龍道コーチに支えられながら、透子はホテルのエントランスに止まっていたタクシーに乗り込んだ。

「寝る前に家の住所を言え」と言われ、透子は車の窓に頭をもたれながら自分の住所を伝えると、あっというまに眠りに落ちていった。

おい、着いたぞ、と言われてぼんやり半目をあけたときにはいつの間にか自分の部屋のソファで半身横になっていた。

龍道コーチがいることに大して驚かなかったのは、酔いがまったく醒めていないせいだった。
透子は体を起こす。
頭の中で脳みそがぐるんとひっくり返ったような気がした。


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