庵歩の優しい世界
004








 話は福沢家の荷解きを手伝う数日前に遡る。



 週4日、私は家の近くの書店でアルバイトして、朝8時から14時までせっせと汗水垂らし涙ぐましい努力の末


(ちょっと大袈裟に言っている)


お給料をいただいているのだ。



訪れるお客さんから無茶な本さがしを頼まれたり、新刊本のポップに頭を悩ませたり、十分ちゃんと働いている。


と自分では思っているが、珠手(タマデ)に言わせれば


「いつも懸命にサボりながら給料をもらっている」ように見えるらしい。

ほとほと失礼なやつだ。



「何かお探しで?」



 雑誌を開いていながら全然集中していないその人に、私は極めて仏頂面で尋ねた。


昼の12時、お昼ご飯どき真っ只中の書店はがらんとしていて、声を潜めていても、それだけで目立った。


今のところお客さんは、彼ひとり。


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