夢幻界〜Welcome to the world of dreams.〜

 ぼんやりとした眠気眼は、しかしながら次の瞬間、大きく見開かれた。

 バッチリと視線の合った彼も、驚いている。

「っみ、水瀬?! 目が覚めたのか??」

「真柴く、」

 何これ。私まだ、夢を見ているの?

 自然と唇が震えて、それを止める為にギュッと噛み締める。固く目を瞑って再び開くと、すぐ近くに彼の姿があった。

「夢、じゃない……?」

「大丈夫?」

 真柴くんは側に置いていた丸椅子を引き寄せて、腰を下ろした。

「水瀬、倒れたんだよ。一週間前に、学校の校庭で」

 一週間前……。

「野球のボールが……当たって?」

「そう」

 真柴くんは私をジッと見て、穏やかに目を細めた。

「倒れた時、すぐそばの石段にちょっとだけ頭をぶつけたから……やばかったんだけど。
 良かった。ちゃんと目覚めてくれて」

 言いながら彼は俯きがちに洟をすすった。

 それでどうして、真柴くんが病室(ここ)にいるという現実へ繋がるのだろう?

「あ。水瀬のお母さん、さっきコンビニに行くって言って出たとこだから、じきに戻るよ。安心して?」

 これが本当に現実なのか不安が続くものの、私はコクリと頷いた。
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