【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜



 わたしは五月女社長の顔を見ることができなくて、ずっと下を向いていた。

「桃原(ももはら)さん」

 何も言えずにいると、五月女社長はわたしの名前をそっと呼んだ。

「……はい?」

 名前をよばれ顔を上げると、五月女社長はそっと話しだした。  

「゙奏人゙って、誰?」

「……え?」

「この前会った時。 保管庫の前で、俺のこど待って、奏人゙って言ったでしょ?」

 わたしはそう言われて、目を見開いた。そして彼のことを見た。

「……あ、あれは、その……」

 そう聞かれて、答えを探してしまった。

「その奏人って人、桃原さんの恋人なの?」

「……奏人は、恋人、だった人です」

 わたしは静かにそう答えた。

「……え?」

「奏人は……。彼はわたしの、恋人だった人です」

「だった……?」

 彼はわたしを、不思議そうに見ていた。

「……はい。彼とは3年前まで、交際していました」

「……そうだったん、だね」

 彼は切なそうに俯いてしまった。
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