【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜



 だけど今目の前にいる奏人と同じ顔の男性が、どう考えてもわたしにはもう奏人にしか見えなくて……。

 嬉しい気持ちと切ない気持ちとで、心が揺り動かされそうだった。

「……その奏人って人に、俺は似てるんだ?」

 突然彼は、沈黙を破りそう言ってきた。

「……え?」

「あの時君は、俺のことを見てその恋人だった男の名前を呼んだ。……ということは、その彼と俺は、似ているということだろ?」

 そう言われて、どう答えようか迷った。正直に言うべきかどうか、迷った。

 もし今、五月女社長に……わたしの愛した人とあなたが同じ顔をしていると言ったら、彼はなんて言うのだろうか……。

 驚くことには間違いない。だけど、彼には笑われるかもしれない。……もしかしたら、冗談だと言われるかもしれない。

「……桃原さん?」

「あの……」

「はい」

「……五月女社長、あなたは……」

 五月女社長、あなた……。本当は、失踪した奏人なんですか?
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