【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜



「……ですよね」

 彼が奏人だなんて証拠、どこにもない。誕生日も、住んでいる所も、年齢も。……全部奏人とは違っていた。

「……桃原さん」

「……はい」

 一瞬でも、彼が奏人なのではないかとか疑っていた。だけどやはり違っていた。……彼は同じ顔、だけど中身は別人だ。

「あなたは……今でも、その彼のことを?」

「…………」

 そう聞かれても、ちゃんと答えることが出来なくなってしまった。

「答えたくないのなら、ムリに答えなくてもいいです」

「……分かりません」

「え?」

 今でも彼のことを想ってないと言えばウソになる。……だけど失踪して行方が分からないまま、3年もわたしは、こうして生きてきた。

 だけどわたしは今でも、本当は奏人のことを好きなのかもしれない。……だけどそれが愛なのかどうか、分からない。

「もう分からないんです。……わたしは今でも、彼のことを好きなのか。もう、分かりません……」

「……そっか」
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