エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
「相良?」

なんだか懐かしい苗字を呼ばれて振り返ると、見知った人物が驚いたように立っていた。

「岩倉くん!?」

彼は大学の同級生で、私の最初で最後だろう男友達。
岩倉くんは気さくで、誰とでもすぐに仲良くなっていた。
私も、岩倉くんの数多い友達のうちの一人と思ってもらってるだろう。

「わぁ〜、久しぶりだね! 元気にしてた?」

「おう。 一年ぶりか。卒業以来会ってないもんな。 相良も元気そうで」

「元気よ」

「今、仕事中?」

岩倉くんが私の手元を見て訊く。

「うん。まぁ、そんなとこ」

この買い物は仕事と言っていいものか。
少し悩んでから、なんでもいいかと苦笑する。

「俺今あんま時間ないんだ。 良ければ今度、ランチ一緒にどう? 久しぶりだし、近況報告がてら思い出話でも」

おお、結構嬉しいお誘いだ。
最近茉梨佳以外の友達と会ってなかったし、積もる話もあるよね。

「ええ、是非」

「良かった。 連絡先交換しよう」

ごく自然なやり取りで連絡先を交換。
相手が男の人でも、岩倉くんだと特に抵抗も感じない。
社長と岩倉くん、何が違うんだろ?

「苗字…秋月?」

「ああ、うん。そうなの。 親が離婚して。
あ、でも相良のままでいいよ」

「わかった。 また連絡する。じゃあな。頑張れよ」

「岩倉くんもね」

手を振って別れ、今度こそ駅へ向かった。


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