エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
三、ハプニング




翌週、五月を迎え、スーツを着ていると汗ばむようになってきた。
社長も社内ではワイシャツ姿なのが新鮮で、腕まくりをして仕事をしているところなんかそれだけでドキッとしてしまう。
最近社長との距離が妙に近い気がするのも原因だったりする。

まぁそれは、私に限ったことではないのだけど。
女性社員の社長への視線はますます熱くなっているし、ラブレターや告白も相変わらない勢いだ。
夏はカップルの行事が多いのも理由かもしれない。
花火大会とか夏祭り、海なんかも人気のデートスポットだったり………って、何を考えているんだ私は。
一緒に行く相手もいないくせに………社長、誰かと行ったりするのかな。
ていうかまだ五月!!
女子社員の必死さに影響されてそんな先のことまで考えてしまう…。





その日の午後、社長と外回り中のことだ。
社長が小腹がすいたというので私たちはコンビニに寄った。
運転手さんは社長との付き合いが長いそうで、いつも社長の気まぐれに臨機応変に対応している。
私はというと、かれこれ一年以上お世話になっていながら、未だに車内に二人きりで残されるとどうも落ち着かない。
なのでトイレと言って外に出る。
運転手の佐倉さんはとても良い人なのは分かっているけれど、落ち着いていて寡黙な彼が少し苦手なのは内緒だ。
普段一緒にいるのがどちらかというと賑やかな社長なので尚更慣れないのかも、なんて思う。
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