エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
「分かった。 朝食は任せるよ」
彼はふんわりと笑って私に朝食係を任命してくれた。
けれどその後で、私はサーッと青ざめる。
「も、もしかして、人が作った食事が苦手だったりしますか?」
社長は断ったのに、私が押し切った形になった。
気を使って我慢しようとしてくれていたら本末転倒だ。
「いや、全然。 むしろ朝から陽葵の食事を食べられるとか死ぬほど嬉しいね」
「あ、そ、それは良かった…です?」
やっぱり、社長にとって私って何者?
女神とでも思ってくれているの?
あ、それはさすがに言いすぎた。 恥ずかしい。
コンビニからの帰り道、社長と並んで歩いていると不思議な感じがした。
だって、どことなく新婚夫婦感があるんだもん。
買い物をして、男の人と同じ部屋に帰るんだよ?
しかも相手、超イケメン社長なんですけど。
社長のファンなら一度…とは言わず、憧れるものなんじゃないだろうか。
って、やめよう、そんなこと考えるの。
非日常が妄想を捗らせる――
「同じ家に帰るとか、夫婦みたいだな、俺たち」
社長も同じこと考えてたーー!?
うっわぁ、どうしよ。
超恥ずかしいんですけど!
「やだなぁ、私とじゃ釣り合いませんよ! せいぜい兄妹ってところですって」
うん、うん。
私たちは傍から見て夫婦というより兄妹だ。
恥ずかしさを誤魔化すつもりで言ったけど、妙にしっくりくる言い訳だ。
なんなら身内ってのもおこがましいくらいであります。
「そんなことないと思うけどなあ。 陽葵、可愛いし」
「か、かわ!? 冗談やめて――」
「俺は冗談で、女に可愛いとか言わない」
それは、とても誠実でいいと思います…よ。はい。
でもそれを私に言っちゃうのは勿体ないというか……。
「俺には陽葵が一番可愛く映るんだけど」
暗くてよかった。
顔が熱い。 こんな真っ赤な顔、見せられないもん。
やっぱり社長はひと味違う。
可愛いとかそういう言葉をサラッと言えちゃうのだから。
不覚にもキュンキュンしてしまうのは、最早生理現象だと思う。
「そういうこと言わない方がいいですよ……多分、言われたら好きになっちゃう」
言ってしまってからはっとしたけど、時すでに遅し。
社長にはちゃーんと聞こえていた。
「それって、陽葵も? 俺の事好きになっちゃった?」
「わ、私を除いて、です!!」
「なんだよ。 例外かよ」
社長はいつもと全く変わらない様子で振る舞うけれど、私の心臓はバックバクでうるさいくらいだ。
社長が余裕でいられるのは、本気にしていないから?
結局最後は謎を残して終わる。
それが社長なのだ。