エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~

「陽葵。 安心しろ。俺はお前を離してやれる自信が無いからな!」


そしてふと、そんな宣言をしてくれる。
こればっかりは、何度言われても嬉しいものだ。
ついついにやにやと、頬が弛んでしまう。
締りのない顔をしていると、社長が頬をつついてきた。

「くすぐったい」

いつの間にやら、屋上にいた数組の社員は居なくなっていた。
社長もそれを分かっていて、私の唇に軽くキスを落とす。

「ここ、会社です」

「スリルがあっていいだろ」

にやりと微笑む社長。
やっぱり頬が弛んでしまう私。

恋人歴一週間。
あまーい社長様との恋愛は、楽しい。







それから更に一ヶ月が経ち、季節はすっかり夏本番に入っていた。
毎日毎日暑い。
社長室はエアコンが効いているので涼しいけれど、それ故に一歩廊下に出た時のギャップにやられるんだ…。

蒸し暑い廊下から逃げるようにエレベーターに乗り込み、ゆっくり降下しだしたそれに少し焦る。
単独で外回りに出かけた社長が資料を忘れていたのに気づき慌てて追いかけたものの……階段の方が早かったかな。

汗かいちゃうけど、次どこかで止まったら降りて階段に切り替えよう。
社長室フロアには重役専用のエレベーターも備わっているけれど、私ひとりで乗るには恐れ多い。
< 73 / 87 >

この作品をシェア

pagetop