騎士(ナイト)に チェックメイト
医師と看護師は検査結果を伝え、目が覚めたらナースコールで教えて下さいとだけ言い部屋を出て行った。
誰も話さない。
静まり返った部屋の中。
樹はさくらをこんなにも弱らせてしまった、傷つけてしまった、守れなかった、その事が頭を支配しさくらに近づく事が出来ずにいた。
守るなんて口だけになってしまった。何も根拠はないが俺なら出来ると自信があったのかもしれない。何でだ。何一つ出来ていない。最悪の結果だ。
後悔が心をドロドロに溶かし、こんなにも愛くるしくて仕方がないさくらをもうこの腕で抱く事は出来ないとその時樹は思った。
そんな資格俺にはないと。
「んんっ」
身を捩る様にさくらが少し動いた。
「さくらっ!」
お母さんは懸命にさくらの名を呼ぶ。
ゆっくりと重たい瞼が開いた。
「さくらっ!わかる?お母さんよ?」
お母さんの問いかけに少しだけ頷いたさくらはゆっくりと周りを見渡す。
「さくら、ごめんね。ごめんね。」
お母さんはまた涙を流しながらさくらに謝り優しく頭を撫でた。
その後医師の診察をし、さくらは栄養失調の為3週間入院する事になった。