秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
やっと読めてきた。どうして茜音が頑なに「晴馬の父親はいない」と言い張るのか。そして、出産の事実を実の父親である涼晴に黙っていたのか。言いたくても、言えなかったようだ。

暗くうつむく茜音の顔を、まじまじと覗き込んで尋ねる。

「それで? 契約というからには、対価としてなにかもらったんだろう。なにを受け取った? 金か?」

その問いに答えたのは、男のほうだった。口元に嘲笑を浮かべながら、端的に説明する。

「お兄さまの会社の顧客です。株式会社アートディヴィジョン、ご存知ですよね。お兄さまの会社をご紹介する代わりに、藍葉様には涼晴さんから手を引いていただきました」

「……は?」

寝耳に水とは、まさにこのことだった。


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