秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました

しあわせに犠牲が必要なら

「ふざけるなよ!」

兄の約二年ぶりの激昂に、私はびくりと肩を震わせた。

前回こっぴどく叱られたのは、子どもを産むと宣言したときだった。

……いや、叱られたというより、泣かれた。父親は誰なんだ、なぜ自らつらい人生を歩もうとする、そんなことを言って兄は取り乱し、泣いたり怒ったりとひどかった。

あのときの兄は私を心配してくれていたけれど、今日の兄はただ純粋に怒っている。

自分の選択が間違っていたとは思わないが、胸が痛んだ。

辰己家の使用人は、事情をあらかた説明したあと帰っていった。『契約のことをどうぞお忘れなく。守っていただけないようであれば、我々も相応の対処を致しますから』と脅しのような警告を残して。

墓まで持っていこうと決めていた秘密を、一番知られたくなかった兄にバラされ、私はもう兄の目を見ることができなかった。
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