秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「俺にデカい仕事を斡旋するために涼晴から身を引いた!? 冗談じゃない! そんなことをされて、俺が喜ぶとでも思ったのかよ!」

「身を引いたのは、涼晴がアメリカで縁談をすると聞いたからよ! お兄ちゃんと涼晴がここで話をしてたんじゃない!」

私がこのリビングを指さして言い募ると、兄はぎくりとして身を強張らせた。

「……聞いていたのか!?」



涼晴がアメリカへ旅立つ三週間ほど前。

私が残業を終えて夜遅く家に帰ってくると、兄と涼晴が晩酌をしていた。

涼晴は普段、ほとんどお酒を飲まない。病院からの呼び出しにいつでも応じられるようにしているそうだ。

しかしこの日は珍しく、テーブルの上に日本酒の瓶が立っていた。もうほとんど残っておらず、かなり前から飲み進めていたのだとわかる。

待機医には日ごとに優先順位が割り振られるそうで、1、2はいつでも駆けつけられる距離にいなければならず、飲酒も禁止。3、4は呼び出しの頻度こそ少ないものの、もしもの場合に連絡がくるという。

5になるとよっぽどの災害でもない限り呼び出されることはないそうで、今日は5の日なのかなぁと思案した。
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