秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
兄が今日の担当医をチェックすると「あ! すごいラッキーだな!」と言って目を輝かせたので、まさかと蒼白になる。

四番診察室の担当は眞木先生――って、まさか涼晴のこと?

昨日帰国したばかりでさっそく外来に回されるなんて。もしかして、この病院って超絶人手不足?

私は慌てて左手の薬指の指輪を外し、ポケットに隠した。

兄は私から問診票を奪い取り、医師の希望欄に眞木先生と名指しする。

案の定、意外と早く患者ははけ、一時間も経つ頃には自分の番がやってきた。

看護師に中で待つように指示され、兄とふたりで診察室手前の椅子に移動する。大人しく待っていると、少し離れたところから看護師たちの話し声が聞こえてきた。

「この患者さん、四番に回して大丈夫でしょうか? すごく厄介な患者さんなんでしょう? 新しく来た先生には、荷が重いですかね……」

四番――つまり、涼晴のことだ。兄が、お?という顔で聞き耳を立てる。

訪ねられた看護師は、全然大丈夫よと笑って返事をした。

「眞木先生は大ベテランよ。来たばかりの山田さんは知らないだろうけれど、二年前もここで働いていてね」

「婦長も小躍りしてましたよね。眞木先生が帰ってきたって」

「当時は若いのに腕が一番いいって大人気だったから」
< 56 / 205 >

この作品をシェア

pagetop