偽りの夫婦
そして紫龍と陽愛は、偽りの夫婦。

戸籍上はちゃんとした夫婦なのだか、なぜ“偽り”なのかと言うと━━━━━
紫龍と陽愛は、出逢ったその日に結婚したから。

紫龍は陽愛に強烈な一目惚れをし、陽愛は運悪く記憶を失くしたことから、紫龍にいいように記憶を刷り込まれ、結婚したのだ。
だから、紫龍は陽愛に愛情があるのだか、陽愛は愛情があると思い込まさせているので“偽り”なのだ。

二人が出逢ったのは、一ヶ月前……

陽愛が勤めている、ショップでのこと。
紫龍は俗に言うインテリヤクザの若頭で、不動産・リース会社を経営していて、陽愛が勤めているショップも含めこの辺一帯は、紫龍の持ち物だ。
その日は、陽愛のショップの近くでトラブルがあり、紫龍も来ていた。
その時、紫龍は陽愛に強烈な一目惚れをした。

そして、陽愛が仕事が終わり買い物をして帰ろうとした時に、事件は起こった。
電車の時間が迫っていて駅まで、急いで向かっていた陽愛。
横断歩道を走っていると、曲がってきた車に接触しそうになり、かわした拍子に頭を強く打ったのだ。

道路は騒然。
そこで救急車を呼び、助けたのが紫龍だった。

「頭を強く打っている様で、記憶の一部を失くしているようです。しかし日常生活に困難な記憶を失っている訳ではないので、普通に生活できます」
との医者の説明で、紫龍は思う。
だったら上手くすれば、俺だけのモノにできる、と。

そして巧みな話術で、陽愛と結婚したのだ。

紫龍は眉目秀麗で、会社の代表取締役(表向き)とゆう誰がどう見ても羨ましい限りの男。
とても賢く、女にも苦労したことのない程の男だか、その分嫉妬され辛いこともたくさん経験していた。
でもこの時ばかりは、自分の美しい容姿に感謝した紫龍だった。
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