偽りの夫婦
「旦那?」
「え?あ━━━」
「そうですよ。あなたは?」
さりげなく陽愛を、背中に隠して紫龍が向き直る。

「今月からこのショップの責任者になった、鳥羽と言います」
「陽愛の夫の紫龍です。今急いでるので、ここで…」
そう言って陽愛を引っ張り去っていく。

「ふーん。神宮 紫龍ね……」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ンンン…ふぁ……」
車内で、貪るようなキスを受けている陽愛。

「……許せないなぁ…」
陽愛の口唇を一度離し、親指で撫でる。
「はぁはぁ………
え……?」
「アイツのあの目……。
潰しちゃおうかな…?」
「え…紫龍…?」
紫龍の雰囲気が、黒く染まっていく。

「だって、俺の陽愛をもう二度と、見れないようにしたいじゃん」
「え?紫……」
「フフ…冗談だよ…(笑)」
「え?」
「フフ…」
「もう…」
「早くご飯食べないと、時間なくなるな…」
「うん。どこで食べる?」
「一昨日行きそびれた定食にしようか?陽愛食べたがってたし」
「うん…」
「じゃあ森井、そこ行って?駅前の定食屋」
「畏まりました」

定食屋に着き、
「今日はお客さん少ないみたいだね!」
「少し昼食時間過ぎてるからな」
カウンター席に座る。

紫龍がテーブルに頬杖ついて、陽愛の髪の毛に触れた。
「陽愛、何にする?」
「ランチ定食にしようかな?紫龍は?」
「んー。俺も」
「ん。じゃあ…すみません!ランチ定食二つお願いします」
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