帝王と私~Darkness~
「え…抱いてくれないの?」
「抱くわけないでしょ?今日みたいな日に。俺は最低・最悪な男だけど、弥生のことは大切にしたいんだから」
「………」

正直、弥生は戸惑っていた。
貴将の愛情は痛い程わかる。
本気で愛してるからこそ、大切にしてくれてること。
でも、貴将に抱かれたかった。
出来ることなら、いつものように狂ったように抱かれ、何もわからなくなりたかった。
今日のことを忘れたかった。

「ほら、寝よう!」
貴将が弥生の頭をポンポンと撫でる。
「嫌…」
「弥生…?」
「抱いてほしい…貴将さんに抱かれたい!」
貴将の目をしっかり見て訴える、弥生。

「………ダメだよ?今日あんな嫌なことされたでしょ?」
「でも!抱かれて、忘れたい!」
「ダメだ……」
「どうして?
…………もしかして…貴将さん、私が穢れたから触れたくないとか…?
確かに…髪の毛や頬、触られて服破られたけど、それ以外は何もされてないよ?
ほんとだよ?貴将さんが助けに来てくれたから」

「弥生が穢れたなんて思ってないよ?弥生は綺麗だよ。俺には真っ白すぎてもったいない位…」
「だったら、どうして?」
弥生の目から涙か溢れていた。

「今日はダメなんだ…!」
「だから、どうして?」
貴将の悲痛な表情。
その今までにない、辛そうな貴将の表情に弥生は、初めての感情に包まれた。

抱きたい━━━━━
私が……。
この狂おしい程に愛しい人を。
抱かれたいではなく、抱きたかった。

「だったら、私に抱かせて?」
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