研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
そこでやっとお互い顔を見た。

殺伐とした表情。

結婚も、セックスも、理仁の中でなんなんだろう。

私の存在ってなんなんだろう。

「さっきから、『じゃあ』『じゃあ』ばっかりじゃん、理仁の気持ちを言ってよ」

私の声に、理仁が短いため息を吐き出す。

「じゃあ言うよ、俺の気持ち」
「また『じゃあ』って言った」

私の目を見てきた。
理仁が覚悟を決めたように口を開く。

「俺は環と絶対に別れたくなくて、アメリカで研究がしたくて、でもまだ学生結婚は怖くて、だけど今すぐセックスしたい。そんなもんだよ、俺の本当の気持ちなんて」

あまりにも正直な言葉に、呆れて物が言えない。

「ワガママなんだよ、俺」

理仁がそう嘆く。

「しよう、セックス。それで私もアメリカついていく。向こうで就職すればいいんでしょ?」

脳を経由せず反射的に出てきた文句。

思いつきだけでそんなことを簡単に言ってしまう私を、理仁が冷めた目で見る。

「本気で言ってんの?」

私の気持ちはたった一つしかない。

結婚がしたいわけでも、アメリカに行きたいわけでもない。

「理仁と離れたくない」

絞り出すように出した本音。
理仁が少しだけ考えたような間を置いて、私の頭に手を置いた。

「もう今日はとりあえず寝よ」

一気にトーンダウンする空気。
結論は出なかった。

言い争った後なのに、会話はないのに、手を繋いで寝る。

まだお互い、お互いの存在を諦め切れないでいた。
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