研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜
案の定、次の日理仁が私の顔を見てハッとした表情になる。

「ごめん」と言う前に「大丈夫だよ」と言った。

「え?」
「李さんに相談した」

理仁がグッと口を閉じる。

「デートだったんでしょ、昨日」

黙り込んだまま何も言わない。
悪いことがバレた中学生みたい。

なんでそんな罪悪感を感じてるの。

そこまでして会うなら、もっと堂々とすればいいのに。

「飯食っただけだよ」

なんでそんなに言い訳がましいんだろ。
何を私に構えてるの。

そういう態度が、勝田エリーのことも私のことも傷つけてるんだよ。

「まあ、いいや」

私は勝田エリーの話を終わらせて、レポートを一枚理仁に渡す。

「ねえねえ、これさ、逆の実験検証は必要ないのかな」

理仁もやっと表情を研究室モードに変えた。

「やっぱいると思う?」
「絶対そこらへん聞かれると思うよ」

理仁がカレンダーに目を向けて、考え込む。

スケジュール的にもう一回実験して、それを論文に盛り込んだらギリギリになる。

年明けに教授に提出。
クリスマスどころか、年末年始も返上してやるしかない。

理仁が顔を上げた。

「やろう」

私は頷くと、今日も論文を書く予定だったけど実験の体制を整えた。

そしてふと、これでまた忙しい日が増えたらいいのに、なんて思惑が自分にあったことに気付く。

昨日みたいに途中で抜けられるくらいなら、学会発表まで忙しくて全然構わない。
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