研究員たちの思春期〜恋の仕方が分かりません!〜

9.フィールドワーク

水質汚濁調査のフィールドワーク。
少し離れた山の中にある沼に研究室全体で集まった。

全員汚れてもいい防水サロペットに着替える。

悲しい。
なんでこんな格好。

理仁はこんなダサい格好でもカッコよく見える。
顔面が整ってるって得だ。

教授から説明を受ける。

環境とミジンコの関係性。
班ごとに沼の範囲に分かれて、水を収集してくること。
ドクター(博士)はマスター(修士)の管理、補助をすること。

私と理仁は、一緒に行動することになった。

班ごとに分かれたマスターの集団に混ざって沼の周りを歩く。

「俺、こういうのワクワクする」

足場の悪い道を歩きながら、理仁が振り返る。

「私も研究室にこもるより、こっちの方が好きだな」

木と木の隙間から漏れると書いて木漏れ日。
すごく好き。

後輩たちがズンズンと進む中、理仁と私はマイペースに歩く。

「ねえ、告白の返事、もうしたの?」

足元を見ながら聞いてみた。
理仁が少し驚いた表情になる。

「なんでそれ知ってんの」
「研究室に戻る時に偶然聞いた」

理仁が「そっか」と視線を落とす。

少しずつ目的地に近づいてきた。
先頭を歩く子が道を曲がる。

「まだだけど」

そう言う理仁と目が合った。

早く、結論を出してほしい。
でもそれを部外者の私が言うことじゃない。

「まだ、よく分からないから、結論が出ない」

そう言ってまた視線を前に向ける。

なんで。
なんでそんなに悩むの?

好きか嫌いか、すぐ分かるじゃん。
< 56 / 108 >

この作品をシェア

pagetop