身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
「でも、俺はあの頃からもうお前が好きだったけどな」
「えっ」
そうだったの?
突然の告白に、柊一さんを見つめたまま体が固まってしまう。
「今だから言うけど、俺は美桜が式場のドレスショップで働いていた頃から好きだから」
「えっ、そんなに前から?」
ということは、私が第三営業課に異動になる前から柊一さんは私に好意を寄せてくれていたことになる。でも、それだとひとつ疑問がある。
「でも、あのとき柊一さんは本社勤務でしたよね。私たち接点ありました?」
「あったよ。お前まったく覚えてないだろうけど」
どうしよう。覚えていない。
だって、式場勤務のまだ入社一年目の新人だった私が、本社勤務で経営者一族出身のエリートな柊一さんと関わる機会なんてなかった気がする。
「俺が、本社の第三営業課の課長になったばかりの頃だな。その業務のひとつで全国にあるドレスショップを視察して回っていたんだけど、そのひとつに美桜がいた。あのとき、俺に声掛けられたの本当に覚えてない?」
「えっと、ちょっと待ってくださいね」
もう一度、当時の記憶をよく掘り起こしてみる。
あの頃、私は入社一年目の新人で『リリーオブザバリー 表参道店』のドレスショップに勤務していた。そのとき、本社から来た柊一さんに声を掛けられたらしいけれど……。