身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
 
 柊一さんに冬真を預けることはもう心配していない。まだ二回しか会っていないふたりだけど前回の動物園でかなり打ち解けているし、冬真もパパと一緒にいられるのを楽しみにしていたから。

 でも、彼の仕事のじゃまにはならないだろうか。柊一さんだって仕事でここへ来ていると思うし、社長が小さな子供を連れていて本当に大丈夫なのかな……。

 すると、私の不安を察した柊一さんが「大丈夫」とうなずく。

「基本的に俺は今日、特にやることないから。控室のモニターでショーを見守るだけ。まぁ、何かとんでもないトラブルが起きたら会場に行くけど、その場合は圭太に冬真を預けるけどいいよな?」
「榊さんですか」
「あいつも今日この会場に来ているし、子供の扱いなら俺よりも慣れているはずだ」

 柊一さんのその言葉に、私は思わず首をかしげてしまう。どうして榊さんが子供の扱いに慣れているのだろう。

「そういえば美桜には言ってなかったな。圭太、二年前に結婚して子供いるから」
「そうなんですか⁉」
「今年で二歳になる。冬真のふたつ下だな」
「それは、知りませんでした」

 まさか榊さんが結婚して、子供までいたとは。二年前というと、私はもうセリザワブライダルを辞めていたので知らなかった。

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