身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 セリザワブライダルの新作ドレスショーは、これから結婚を考えている女性にとって最新ドレスをいち早く見ることができる貴重な機会であり、とても人気がある。そのため、教会収容人数の上限である百五〇名分のチケットはいつも即完売してしまうのだ。

 そんな入手困難のチケットを無事にゲットできたのだから、ここにいる女性たちがうきうきとした様子でドレスショーが行われる教会へ向かうのにもうなずける。

 その雰囲気にのまれるように私の気分も自然と高揚してきた。

 というのも、私は新作ドレスショーを見るのは今日が初めて。衣装事業部で働いていた頃に一度だけ制作側で携わったことがあるものの、ステージ裏でバタバタと忙しく動き回っていたせいで肝心のショーは見られなかったから。

 ドレスが大好きな私としては興奮するに決まっている。でも、それも今日で最後。子供の頃から抱き続けたドレスへの想いを私はきっぱりと断ち切らないといけない。

「――美桜?」

 教会へ入場するためのチケット確認の列に並んでいると、後ろから不意に女性の声に名前を呼ばれた。

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