身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
「だいぶ遠回りをしたが、ようやく最高の返事が聞けた」
ホッとしたような柊一さんの声が耳元で聞こえて、抱き締められていた体がそっと離れていく。
「さっそくだがこのあと俺の実家へ行かないか?」
「えっ。それはまた急ですね」
「当たり前だろ。こういうのは勢いが大事だ」
でも、いきなり私と冬真が訪れて大丈夫なのだろうか。門前払いされたりしたらどうしよう。
「実は、両親にはもう美桜と冬真のことを話してあるんだ。会いたいと言われたよ」
「それは、いったいどういう意味の会いたいなんでしょうか」
不安が一気に込み上げて恐る恐る尋ねる。
反対されたらどうしよう……。
しかし、そんな私の不安を一蹴するように柊一さんが優しく微笑んだ。
「もちろん歓迎しての意味だ。結婚の了承ももうもらっている」
「えっ、もう?」
「勝手に進めて申し訳ないが、これ以上遠回りはごめんだ。ここからは駆け足で進めていくから、しっかりついてこいよ」
強引だけど、力強いその言葉に気が付くと私は大きくうなずいていた。