身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
「もう離れません」
「そうしてくれ。勝手に俺の前から姿を消すのはもうなしだからな」
「はい――」
少しずつ柊一さんの顔が近づいてくると、返事を告げた私の声ごと飲み込むように唇を塞がれた。
そのまま私たちは互いを求めるようにキスを続け、しばらくすると名残り惜しそうに柊一さんの唇が離れていく。
「パパー!」
そのとき、聞き慣れたかわいらしい声が遠くから聞こえた。振り向くと、冬真がこちらに向かって大きく手を振っている。隣には榊さんの姿があるので、どうやら彼が冬真をここまで連れてきてくれたらしい。
私と柊一さんが手を振り返すと、冬真がこちらに向かって元気いっぱいに走り出した。
にこにこと駆け寄ってくる息子に柊一さんの目尻が下がる。その緩み切った表情から冬真への愛情がたっぷりと伝わってくる。
四年前、柊一さんのもとを離れたあとで冬真がお腹の中にいるとわかったとき、戸惑う気持ちももちろんあったけれど、すぐに嬉しい気持ちが込み上げてきた。
大好きな人とのつながりがまだここにある。彼と確かに愛し合った証が自分のお腹に宿っているとわかったとき、絶対にこの子を産みたいと思った。