身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 保育園に通い始めたばかりのときも、預けてから迎えにいくまでずっと泣いていて、先生に抱っこされながら過ごしていた。

 もうすぐ四歳になる今ではもうすっかり園生活を楽しんでいるけれど、ここに至るまでが大変だったなと当時の苦労が蘇る。

 たぶん初めての人や場所に馴染むまでに時間がかかってしまうのは私に似てしまったのだろう。

「でも、どんな冬真でもママは大好きだよ」

 冬真の前髪を手でもちあげると、おでこにそっとキスをする。

「おやすみ、冬真」

 私の大切な宝物。

 夢も恋も諦めて手放したけど、冬真だけは絶対に離さない。私がひとりでしっかりと育ててみせる。





 翌日、冬真の熱がまだ少し高かったので小児科を受診した。風邪という診断をもらい、鼻水と咳の症状も少しあるので薬をもらって帰宅する。

 それから土日をはさんで三日ほど休むと冬真はすっかり元気になった。

 そして、今日。週明けの月曜日から冬真は保育園に登園している。しばらくお休みしたせいか、行きたくないと久しぶりにぐずってしまい、見送りの際に私から引きはがすのが大変だった。

 先生に抱っこされながら私を求めて手を伸ばして泣いている冬真から離れるのはつらかったけれど、私も仕事に行かないといけない。

< 28 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop