身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない

 こうして、北海道出張のこの夜をきかっけに私と芹沢課長――柊一さんの関係は上司と部下から恋人へと変わった。

 必ず俺のことを好きにさせてみせるからと言っていた柊一さんの言葉通り、私はすっかり彼に落とされてしまったというわけである。

 なんだか流されるように始まった交際だったけれど、私たちの関係は順調に進んでいき、気が付くと恋人という関係になってから一年が経過していた。

 その間に柊一さんは第三営業課から第一営業課の課長へと異動になり、お互いの所属部署が変わったことで社内ではほとんど顔を合わせることがなくなっていた。

 とはいえ、仕事以外ではお互いの自宅を行き来するなどデートを重ね、交際はいたって順調だった。

 だけどひとつだけ、私は大切なことを忘れていた。いや、考えないようにしていたんだと思う。

 彼が、私にとって本当は雲の上の存在だということを――。




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