身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
『柊一さんは縁談を受けるべきだと思います』
『美桜?』
『それがあなたのためです』
『俺は――』
『もう私に関わらないでください』
柊一さんの言葉をさえぎって私は少し強い口調で告げる。
『私は、芹沢家のもめ事に巻き込まれたくありません。こんな風に華江社長に呼び出されて、変に目を付けられたくもない。もしもそれでこの会社を辞めないといけなくなったら、私は自分の夢を諦めないといけないことになる』
『夢って、ウエディングドレスのデザインをすることだよな』
『はい』
とっさに嘘をついた。今の私にとって大切なのは夢よりも柊一さんだ。
それに、そこまで強く言えば柊一さんは私のことを諦めてくれると思った。
『そうだよな。美桜は自分の夢のためにうちの会社に入ったんだよな』
そう告げる柊一さんの顔が今まで見たことがないくらいつらそうだから、私の心がズキンと痛む。視線が自然と下に落ちていた。
たぶんこれでもう柊一さんとの関係は終わりになる。お互いにまだ好きなのに別れなければならないこの状況がとてもつらい。
だけど、私は手放さないといけない。大好きな柊一さんのために……。