自分勝手な恋

「うん。じゃあ、俺はもっと自分勝手になる。それを止められるのは今だけ。これから俺はこの先にあるホテルに向かうつもり。どうする?」

「……自分勝手な松木さんが、大好きです」


 私の返事を聞いた松木さんは、私の両手を今まで以上に強く握り、助手席へと身を乗り出した。
 軽く唇を重ねるだけの初めてのキス。
 そしてもう一度、唇が触れ合った時、対向車線の車のライトが眩しく反射して、松木さんははっとしたように私から離れた。


「ここではまずいな」


 小さく呟いて松木さんは苦く笑うと、迷いがないか確認するように私の目を覗き込んだ。
 それから前を向いてハザードランプを右ウィンカーに切り替え、車を出した。


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