光を掴んだその先に。─After story─
買ったって、購入したってことだ。
車だって高いの乗ってるのに、マンションも買っちゃってるなんて……。
まだこの人って24歳ですよね…?
あ、そういえば若頭っていう上の立場だった。
「やっぱり私も…マンション買えるくらいにならなきゃ…、」
そうしなければ釣り合うことができない。
この人の横には立つことができない。
雅美さんみたいに美人でもなければ、桜子ちゃんみたいに才色兼備ってわけでもない私は。
本当に平凡で、組長の娘という、天鬼の娘という肩書きだけで特別扱いされてるだけで…。
「やっぱり私、就職する…!こんなにすごいマンションは買えるか分からないけどっ、でもっ」
そんな私を、そっと抱きしめた絃織。
ふわっと広がる大好きな香水の香り。
そう、ここに入ったときから感じていた。
この部屋はすべての場所からこの大好きな匂いがする。
だからこんなにも落ち着くのかな…。
「…そうじゃないんだ。そんなことを言わせたかったわけじゃない。俺はお前とここで───」
ぎゅるるるるるる───…。
・・・・・私だ。
これは確実に私の音だ。
「…飯にするか」
ふっと笑った彼はキッチンへ移動した。
私もうしろをついて行って、大きな冷蔵庫の中を一緒になって見る。
どうやら電気は通っているらしい。
前回このマンションに来たのは先週だと言っていた。
「卵と、塩と砂糖、醤油…あとお米」
「…悪い」
それだけだった。
両開き式の紺色をした大きな冷蔵庫の中にポツンと取り残された食材は、たったのそれだけ。