内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 田原は祐奈の気持ちを考慮して、ああ言ってくれたけれど、実際にはプロジェクトメンバーの話を断るという選択は今の自分にはありえない。
 シングマザーとして大和を育てる祐奈は、仕事を選べる立場ではないのだから。
 でも……。
 祐奈はため息をついて眠る大和をジッと見つめる。
 少し硬い黒い髪と意思の強そうな目元は、彼の父親そっくりだと祐奈は思う。
 まだ母にも言えていない事情が、祐奈を苦しめていた。
 天沢ホテルは巨大な企業なのだから、誘致の話に少しくらい関わったからといって、自分が恐れていることにはならないだろう。
 でも不安な気持ちは、どうしようもなかった。
「大丈夫よね……?」
 大和の髪にそっと触れて、祐奈はぽつりと呟いた。
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