内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
「今日は宇月温泉へ行ってきたんだろう。……どうだ、計画はうまくいきそうか」
 お互いに社長と副社長という立場はあるものの、親子でもあるという気安さで、ふたりは立ったまま話をする。
 大雅は頷いた。
「よさそうです。事前調査の通り、山と海に囲まれたのどかな土地柄で開発も進んでいない。宿泊客が喜びそうな滝がいくつかありますし。なにより温泉の水質がいい。今までも温泉愛好家の間では、十分人気はあるようですから、その鄙びた雰囲気を壊さないようにすれば、いけるでしょう。少し懸念されるのは雇用ですが……子育て世代も……いないわけではなさそうですので、その辺りを活用できれば」
 大雅の言葉に宗久が満足そうに頷いた。
 その様子に、大雅はわずかな違和感を覚える。
 宇月温泉の件に関しては、適宜取締役会で報告を入れている。わざわざこんな時間にひとりで部屋を訪れてまで報告を求める必要はないはずだ。
「雇用はまぁ、なんとかなるだろう。地元の事情をよく調査して、必ずこの件は成功させろ」
 宗久はそう言って、他の話は一切せずに、大雅の部屋を出ていった。
 バタンと閉まる扉を見つめて大雅は考え込んだ。
 父は、本当にこの件だけを確認しにきたようだ。
 でもなぜ?
 天沢ホテルが展開する新しいブランド別館天沢は今社内では一番勢いのある事業で、複数の話を同時進行で進めている。少なくとも他の件に関しては、このように直接確認をされたことはなかった。
 大雅は黒い副社長椅子に腰を下ろして、肘をついて考え込む。
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