内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
「この辺りは少し風が強いんだね」
 宇月ランド跡地からは宇月の街全体を見渡すことができる。
 かつて展望台として機能していた場所に立って、大雅は街を見下ろしている。
 祐奈も彼の隣に立ち、午後の日差しを眺めている。
「そうですね……。特に春は強く吹くんです」
 祐奈の答えに頷いて、大雅はそのまま黙り込む。
 眉を寄せて難しい表情の大雅に、祐奈はそっとその場を離れようとする。さっき彼は現地でイメージを膨らませると言っていた。ならひとりの方がいいだろう。
 だがその祐奈を、大雅が止めた。
「こっちには、いつ戻ってきたんだ? ……祐奈」
 ハッとして振り返ると、さっきまでとは明らかに違う彼の視線と目が合った。まるで責めるように、どこか切実な色を浮かべて、祐奈を見つめている。
「どうして俺の話をまったく聞かずに、俺の前からいなくなった」
「っ……! ふ、副社長……!」
 突然、ふたりの関係を暴露するようなことを言う大雅に祐奈は慌てて周囲を見回す。
 だがついさっきまでそばにいたはずの彼の秘書は、いつのまにか遠くに停めた車の中だった。
 謀られた、と祐奈は思う。
 おそらくはこの話をするために、大雅は祐奈をここへ連れてきたのだ。
 そしてその彼の意図を山城は正確に理解している。
 祐奈と大雅の様子が少しくらいおかしくてもこちらにはやってこないだろう。
「どうして……こんなまねを……!」
 祐奈の頭に血が昇る。
 右手で作った拳を握りしめた。
「仕事のフリをして、卑怯だわ……!」
「君が、俺の話を少しも聞いてくれなかったからだ。なにも聞かずに一方的に別れを告げて、俺の前から姿を消した」
「話すことなんか、なにもなかったからよ!」
 少し気が動転して、祐奈は思わず声をあげる。
 でも放った言葉は本当だった。
 大雅はあの天沢宗久の息子だった。それだけでもう、話すことなんかなにもない。
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