内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
「雪辱を?」
「十年前にも宇月に我が社が進出する話があったのは知っとるな?」
「ええ」
 ただ当時はまた大雅自身、天沢ホテルで働き始めて二年も経っていなかった。
 詳しくは知らないというのが本当のところだ。
「あの時の責任者が社長だったんだ。当時はまだ副社長だったが」
 なるほど、と大雅は合点する。
 だから宇月の件について、やたらと気にしていたのか。
「十年前は、なぜ計画が頓挫したのですか」
 大雅の問いかけに、山下がため息をついた。
「まぁ、いろいろあったんだろうが、最終的には融資が下りんかったと聞いている」
「そうですか……」
「まぁ、今回はそのあたりは大丈夫なようだな。だがホテル事業は息の長い話だ。しっかりやるように」
「はい、わかりました」
 頷くと山下はにっこり笑って大雅の肩をぽんぽんと叩く。
「期待しとるよ」
 そして部屋を出て行った。

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