内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました~極上シークレットベビー~
 宇月ランド跡地で少し言い争った後、役場まで送り届けてくれた大雅は、車を下りようとする祐奈の手を引いた。
『また来る。次に会う時までにふたつの問いかけに対する答えを用意しておいてくれ』
 真っ直ぐなその視線を祐奈はまともに見ることができなかった。
 なぜふたりは別れなくてはならなかったのか。
 大和父親は誰なのか。
 彼が出したふたつの課題が祐奈に胸に重くのしかかっている。
 次に彼がここへ来るのは一カ月後。
 あと一カ月で自分は彼の問いかけに対する答えを用意することができるだろうか。
 と、その時、案内所の自動ドアがウィーンと開く。
 祐奈は反射的にそちらに向けて背筋を伸ばした。
「こんにち……」
 だが自動ドアが開いた先、案内所に足を踏み入れた背の高い人物に祐奈は目を剥いて、固まった。
「こんにちは、秋月さん」
 大雅だった。
「……こんにちは」
 無視をするわけにもいかず祐奈は答える。
 だが突然の彼の登場に、思考がついてゆかなかった。
 次に彼が宇月に来る日は一カ月先だと今思ったところなのに。
 もしかしてなにか緊急事態が?
 それにしては今日の彼はスーツ姿ではないラフな格好だけれど……。
 そんな祐奈の内心をよそに大雅がカウンターに歩み寄り、にっこりとして口を開いた。
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