【完】片手間にキスをしないで

呑み込んだ言葉の先は、パチッ、と電気の通った部屋に溶けていく。


ここが、今日から〝私の家〟になるんだ……。


そうして高鳴る胸を押さえるだけで、精いっぱいだったから。


……ついでに言うと、段ボールもいっぱいだ。


「荷ほどき、徐々にやっていくように」

「はい了解!」

「学校の奴には絶対に言うなよ。誰にも」

「も、もちろんだよ」

「それと、夜はこの辺あんま出歩くなよ。あーいう輩、少なくないから……あ、」

「……うん?」


そういえば、と振り返る奈央は、徐々に距離を詰めてくる。同時に夏杏耶の心臓は、ドッ、と音を荒立てた。


いつになく真剣な表情。2人だけの空間。外は星が輝くロマンチックな夜。


ネオンのせいで星は見えないけれど、と暗に付け足しながら、夏杏耶は口をキュッと結んだ。


ま、まさか、キス……?


待って待って、心の準備が。いや、でも……奈央クンがしたいなら、いつでもオッケー!
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